最高裁判所第一小法廷 昭和34年(あ)2368号 決定 1960年12月27日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人徳田敬二郎の上告趣意第一は違憲をいう点もあるが、実質は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであり、同第二は事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第三は違憲をいう点もあるが、実質は単なる法令(訴訟法を含む)違反、事実誤認の主張を出でないものであって、以上、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(論旨第一に関し第一審判決判示第一のごとく登記簿上自己が所有名義人となって預り保管中の不動産につき所有権移転登記手続請求の訴を提起された場合に、右不動産に対する不法領得の意思の確定的発現として自己の所有権を主張・抗争する所為につき横領罪の成立を肯認した原判示は正当であり、また、論旨第三に関し
(一) 土地の持分に対し登記を経て賃借権の設定を受けた者が、右土地に対しすでに賃借権の設定を受けていた地方公共団体がこれを、その設置かつ管理にかかる高等学校の校庭として使用していた場合に、この事実を以て自己の賃借権を侵害するものであるとして、実力を以て該校庭に「アパート建築現場」と墨書した立札を掲げ巾六間長さ二〇間の範囲で二箇所にわたり地中に杭を打込み板付けをして、もって保健体育の授業その他生徒の課外活動に支障を生ぜしめたときは、該物件の効用を害するから器物損壊罪を構成するものと解するを相当とする。
(二) 右の場合告訴権者は当該高等学校の設置者である地方公共団体に設けられている教育委員会であるが(地方自治法一八〇条の八、教育委員会法-昭和三一年九月三〇日廃止-三条二項、四八条、四九条、昭和三一年法律第一六二号地方教育行政の組織および運営に関する法律二三条、二四条、二八条、三〇条等参照)、他方右高等学校に対し本来管理権を有する地方公共団体(長)もこれを有するものと解するを相当とする。)また記録を調べても同四一一条一号三号を適用すべきものとは認められない。
よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)